イギリスで始めたこと

仕事を終えた帰り道。
大きな川に橋が架かってる。
ここはいつも自動車や歩行者が通るが
この川を船が渡る時、橋は９０度回転して川と平行になり
船が通れるようになる。
写真はちょうど９０度に回転したところ。
これが始まると１０分以上の通行止めになるので
橋の向こう側へ行きたい人たちはちょっとイライラするようだ。

ショップフロアーで仕事をするようになって顔見知りのお客さんも増えてきた。
その中の一人のおばあさんの話。
花売り場の担当が私に替わったばかりの頃
そのおばあさんは前の担当者はどうしたのかと少し攻撃的な口調で訊ねてきた。
前の担当者は店内移動になって私が後任だと言うと
前の人はいつも花を選んでくれたと言うので私でよければと
そのおばあさんの気に入りそうな花を選ぶようになった。
少しずつそのおばあさんが私に気を許してきたのがわかった。

先週久しぶりにそのおばあさんがお店にやってきた。
元気でしたかと聞くとあまり元気ではないと言う。
７４歳の弟さんがオーストラリアに６ヶ月行くことになった。
自分は８４歳だから半年も弟がイギリスを離れると
もう会えないのではないかと思って落ち込んでいたと言う。
それはさびしくなりますねと話を聞いてあげることしかできなかった。
おばあさんは安くて長持ちしていい花はないかしらと訊いた。
私は黄色のフリージアを選んだ。
そこそこ長持ちするがそれよりも香りがとてもいい。
黄色はフリージアの中でも一番香りが強いのだ。
おばあさんにフリージアを渡す時この花が少しでも
気持ちを明るくしてくれますようにと言った。

今日仕事をしていたら私の背中をトントンとたたく人がいた。
振り向くとそのおばあさんだった。
フリージアがとてもきれいに咲いて香りがまた素晴らしいと言ってくれた。
気に入ったからまた一束買っていくわと今日はとても元気が良かった。

私はおばあさんがタクシーを使ってまでよく買い物に来るのは
顔見知りの店員と世間話をしたり人とのふれあいを求めているのだと思う。
話好きのイギリス人。
ちょっと出かけてもどこかで誰かと話をしている。
何気ない会話でも笑顔になり心がちょっと温かくなる。
これはイギリスのいいところだと思う。

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