ロニー
ここ1ヶ月ほど心配なお客がいる。
ロニー。
ある日おじいさんがお花売り場にいる私に声をかけてきた。
「あんた、昨日お休みだったでしょう」と。
どうやら以前このおじいさんの欲しい花束を選んであげたようだ。
それを覚えていて私のところに来てくれたのだが
私がお休みでわざわざ翌日また店まで足を運んでくれた。
花をプレゼントしたいんだけどと言うので
プレゼントする相手は女性ですか男性ですかと尋ねると
そんなことは言えないとニヤッと笑った。
この点で女性だとわかった。
バラがいいと言うので新しい箱を開けて新鮮なバラを見せた。
どの色がいいかとたずねると私がいいと思う色がいいと言う。
綺麗な赤いバラがあったのでそれを選んだ。
素敵な時間が過ごせますようにと言うと照れ笑いを見せた。
それからお店に来ると私に話しかけてくれるようになった。
私の名前を覚えてくれて彼の名前も教えてくれた。
ロナルド。
日本人の苦手なRやLの音が入っているのでちょっと手こずってると
「僕のお母さんはロニーって呼んでたよ」と言うので
私もロニーと呼ばせてもらっていた。
1ヶ月以上も前に
「明日またお花を買いに来るからまた選んでね」と言われていた。
翌日新鮮なバラを用意していたのだがロニーには会えなかった。
たぶん私のいない間に来たのかもしれないと思っていたのだが
翌日も翌週もロニーは現れなかった。
結局一ヶ月以上たった今もロニーには会えていない。
きっと何かがあったのだと思う。
もう70歳を超えていられたので何が起こってもおかしくない年齢ではある。
いつもハンチング帽をかぶっていらしたので
同じようないでたちの方を見るとロニーかと見てしまうが
いつも違う。
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