コス島のホテル

kemmi

2008年10月15日 20:34


コス島ではAlice Springs Hotelに泊まった。
去年くらいから旅行の計画を立てるときにトリップアドバイザーという口コミ情報サイトを利用している。
コス島のホテルを決めるときAlice Springs Hotelの評判がとてもよかった。
家族で経営されているのこのホテルは設備としては2つ星なのに
なぜこんなに評判がいいのかと半信半疑のところがあった。
でも滞在してみてあの評判は嘘ではないと思った。


父のジョージはホテルのあるじ。
チェックインのその時から私たちの名前を覚え、滞在中はいつも名前で呼んでくれた。
これがすべての客に対してである。
先に泊まっている客と知り合うきっかけを作ってくれたりとても気を使ってくれた。
奥さんのバーバラも素敵な女性でプールサイドにあるバーで応対してくれた。
ジョージの妹さんのリタも素敵な女性で料理から客の応対とほぼ全てをこなし
いつも笑顔の絶えない人だった。
次男のイリアスはお父さんを尊敬しそんな父の力になろうと一生懸命。
ゲストの私たちをいつも楽しませようとしてくれた。

私たちがとまった最初の夜にこんなことがあった。
土曜日はフライトの日で新しい客と今まで泊まっていた客の入れ替わる日だった。
飛行機の時間は行き先によって様々でその日は5つの時間があった。
2人の初老の男性が2人、プールサイドバーで彼らの迎えのバスを待っていた。
イリアスが2人にゲスト帳に住所と名前を書いてと頼んで書き込んでいるのを
見ている間にイリアスの表情が変わってきた。
イリアスが2人にロンドンへ帰るのと聞くとそうだと答える。
ロンドン行きのバスはもう8時半に来たと言うと2人は否定した。
「いやいや僕たちのバスは10時半に来るんだ」
この2人、別の時間を自分たちのバスの時間と思い込んでいた。
イリアスが説明しても埒が明かず、イリアスはすぐに父ジョージに
ことの説明をするとジョージはすぐにタクシーを呼んだ。
それから空港、この2人の世話をしていたはずの現地ガイドにも連絡を取った。
これから2人をタクシーで空港に向かわせるので飛行機に乗せるようにと頼んだ。
事の一部始終を見ていた私たち。
イリアスに飛行機は何時と飛ぶのと訊ねると11時という。
時計を見ると10時20分。
大丈夫と聞くとイリアスはたぶん大丈夫と答えた。
親子二人で一生懸命の姿を見て私たちはなぜこのホテルの評判がいいのか
わかった気がした。

とにかくこのホテルの居心地がよかった。
まるで以前からの知り合いのように名前で呼ばれ親戚の家にいるような感覚。
朝から晩まで必ずこの家族がホテルにいて私たちの相手をしてくれる。
朝の挨拶、日中の遊びから帰ってきてお茶を飲みながらジョージたちとお話。
夕食に出かけ戻ってきてから寝る前までバーでお酒を飲みながら
イリアスたちや顔見知りになった他の客とその日の話や
いろんな話に花が咲いた。
他の客も同じように感じていたと思う。
客同士の雰囲気もとてもよかった。
中には17年間毎年来ているご夫婦。
私たちが仲良くしていたご夫婦は3年連続このホテルに来ていた。

ホテルの設備は素晴らしいとは言えない。
熱くなったり冷たくなったりするシャワー。
便座がずれてしまうトイレ。
でも部屋は毎日綺麗に掃除されタオルも毎日きれいだった。
もしサービスが悪かったらシャワーや便座の苦情を言っていたかもしれないが
部屋にいるよりジョージたちや他の客と過ごしている時間が多くて
それが楽しい物だったからシャワーも便座も苦にならなかった。
夫は30年くらいいろんなホテルに泊まったけれどこんなに居心地のいいホテルは
無かったと言っている。

いまどきかなり珍しい電話。


アリススプリングスはオーストラリアの地名。
ジョージはコス島で生まれてオーストラリアで育ち30年前にコス島に戻ってきて
レストランから始めて今はホテルを家族で経営している。
毎週水曜日のオージーナイトと金曜日はジョージが前日から作る
ギリシャのラム肉料理の夜。
どちらも楽しかった。ラム肉の料理も美味しかった。

ホテルを発つ日、私たちの迎えのバスは1番で午前中だった。
イリアスは午後から仕事に来るので残念ながらさよならが言えなかった。
バスに乗り込む私たちをジョージは一人ひとり見送った。
さよならを言ってバスのシートに座った途端、私の目に涙があふれた。
何の涙なのか良くわからないくらい不思議な涙だった。
きっとジョージたちのもてなしに感動したのかもしれない。
とても説明できない涙だった。
たぶん私の前世はギリシャ人でその魂がコス島を離れたくなかったのかも・・・

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