おりこうさん

kemmi

2005年06月28日 01:15

大通り公園のはずれにあった会社に勤めていた頃、
仕事で外出すると時々見かける犬がいた。
肌色の毛の短い犬で雑種のようだった。
飼い主はおらずいつもマイペースに一匹で散歩しているようだった。
私も興味があったので跡をついていくとコースが決まっていた。
お店の角に来ると左に曲がってその先にある駐車場でちょっと用足しをして
それから四斜線の二車線をまず横切る。
中央分離帯の芝生の上少し歩いてから反対の二車線を横切る。
大通り公園に近く、車の交通量も多いので大丈夫かなと見ていると
ちゃんと車の切れたときを見計らって渡っていた。
私の仕事場は3階で窓から駐車場と四斜線の道路が見えたので
ほぼ毎日のようにその犬の姿が見えた。
近くでその犬の顔を見たがとても利口な顔をしていた。

いつからかわからないのだがその犬の姿を見ることがなくなった。
そしてその犬の存在も忘れた頃に一匹の犬を見かけた。
ビッコをひいていた。
あっと思った。あの犬だ。片方の後ろ足が悪くなっていた。
きっと交通事故に遭ったのだ、だから見かけなくなったんだと思った。

それから数日その犬を見かけるとあることに気が付いた。
4,5メートル後を毎日同じ男の人が歩いている。
よく見ていると犬の後ろをつけていた。
飼い主だと思った。なんだか胸が詰まった。
私の想像だけど飼い犬の好きなように散歩をさせていたら
その犬が事故に遭ってしまった。
快復して飼い犬が散歩に出たがるけど心配なので
着かず離れず犬と一緒に散歩することにした。

その飼い主に駆け寄って私がこの犬を知っていることを伝え、
それからなぜ事故に遭ったのか聞きたいという衝動に駆られたが
やめた。

その後も散歩は続き、雨の日も吹雪の日もその犬と飼い主の
着かず離れずの散歩を見かけた。
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